ウーバーイーツの配達員の報酬は世界的に引き下げ傾向にあります[1]Business Insider Japan:「ニンジンなしで走らされる」日本のウーバーイーツで報酬引き下げの知られざる背景。
報酬が下がれば配達員の収入が減り、配達員の生活は苦しくなります。
逆に、配達員の報酬が上がった・アップしたという例は聞きません。
これはなぜなのでしょうか。
この記事では
- ウーバーイーツの配達員の報酬が上がりにくい理由
- もし配達員の報酬が上がったらどうなるのか
などを説明します。
ウーバーイーツの配達員の報酬はこれからどう変わりそうか。
これについて知りたい方はぜひ読んでください。
ウーバーイーツの配達員の報酬が上がりにくい理由
ウーバーイーツの配達員の報酬が上がりにくいのは、以下の3つの問題が原因ではないかと考えられます。
- ウーバーイーツのビジネスモデルの問題
- サービスの開発や維持にかかる費用の問題
- 報酬が下がっていても配達員が集まる、という問題
それぞれ説明していきます。
ウーバーイーツは薄利多売で利益が少ないビジネスモデル
配達員の報酬が上がらない理由としてまず考えられるのは、ウーバーイーツのビジネスモデルです。
ウーバーイーツは
- 料理をつくる飲食店
- 料理を注文した人
- 料理を届ける配達員
この3者それぞれから少しづつ手数料を受け取っており、これが事業の主な収益になります。
もちろん手数料はそこまで高い金額ではありません。
1回のデリバリーで得る金額は少ないけど、たくさんの注文で売上げを積み重ねる。
ウーバーイーツは薄利多売のビジネスモデルなのです。
ウーバーイーツを運営するウーバー・テクノロジーズといえば、配車アプリの「Uber」で有名な会社です。
ビジネスモデルが似ている配車アプリのUberと比べても、ウーバーイーツの営業利益率はかなり低いです[2]REUTERS:コラム:米ウーバー、配車事業への回帰が黒字化達成に唯一の道。
利益率が高くないのに配達員の報酬を上げたら、企業収益的には大打撃となります。
だから、配達員の報酬がベースアップ的に上がるのはあまり期待できません。
サービスの開発や維持にかなりの費用がかかる
ウーバーイーツのビジネスモデルはとてもシンプルです。
しかし、顧客の満足度を上げたり、どんどん増えている競合サービスに勝つために、さまざまなことに取り組まなくてはなりません。
ちなみに世界中にウーバーイーツのようなサービスを展開している会社は無数にあり、日本のデリバリー市場を狙っている海外企業もたくさんあります。
なので、ウーバーイーツ事業から得た収益は
などに使われます。
おそらく広告宣伝費などはかなりの金額になるでしょうから、事業から得た収益を報酬アップという形で配達員に還元するのはなかなか難しいのです。
報酬が下がっていても配達員が集まる
報酬が下がっていても配達員が集まる。
これも配達員の報酬が上がらない大きな理由だと思います。
じっさい、ウーバーイーツは
- 2019年11月末
- 2021年3月〜5月
これらのタイミングで配達員の報酬を引き下げています[6]Business Insider Japan:「ニンジンなしで走らされる」日本のウーバーイーツで報酬引き下げの知られざる背景。
それなのに、配達員は目に見えて増えているように感じます。
報酬が下がっているのに配達員が集まる理由としては以下が考えられます。
さきほど説明したように、ウーバーイーツは薄利多売のビジネスモデルです。
だから運営会社としては、費用となる配達員への報酬はできるだけ下げたいと考えているはずです。
なので、あまり高くない報酬でも配達員が集まっている間は報酬の引き上げは期待できません。
もし配達員の報酬が上がったらどうなる?
ここまで、ウーバーイーツの配達員の報酬が上がらないであろう理由を説明しました。
ウーバーイーツの配達員の報酬は上がらない確率は高いと思います。
けれど、もし配達員の報酬が上がったらどんな変化が起きるのでしょうか?
配達員の報酬が上がったらどのようなことが起こりそうか、予測してみます。
ユーザーの利用料金が上がり、全体の注文数が減る
もしウーバーイーツの配達員の報酬が上がったら、会社のコストが増えます。
となるとウーバーイーツの経営は厳しくなります。
なので、運営側の対応として起こりうるのは
「注文するユーザー側の利用料金の値上げ」
です。
ようは増加したコストを利用者に負担してもらうのではないか?ということです。
ウーバーイーツで料理を注文する場合、ユーザーは料理代以外にも
- サービス料
- 配送手数料
などを支払っています。
なので、ユーザーは店舗で食事を注文するよりも高い値段を払っています。
配達員の報酬が上がると、ただでさえ高く設定されている利用料金がもっと高くなる可能性があります。
もしユーザーが支払う料金が増えたら、ウーバーイーツ全体の注文数が減ってしまうかもしれません。
注文がすこし減るくらいならいいのですが、かなり減ったら配達員の収入ダウンにつながります。
だから、配達員の報酬アップはなかなか難しいのです。
会社の業績が下がり、日本撤退もありえる
もし配達員への報酬を引き上げたら、日本のウーバーイーツを運営するUber Japan株式会社の経営に悪影響を与える可能性が高いです。
なので、もし何かしらの理由で報酬引き上げが実施されたら日本からの事業撤退もありえます。
Uber Japan株式会社は業績を公表しています。
下のグラフを見てください。
これはUber Japan株式会社の利益剰余金の推移です。
2017年からプラスになっていますが、そこまで凄い金額を儲けているわけではりません。
例として、極端な話をします。
日本でウーバーイーツの配達員として働く人は10万人程度だと言われています[8]日経新聞:ウーバーイーツ日本代表 「二兎追うものは三兎を得る」。
報酬アップによって10万人の配達員にわたす報酬が1万円増えたら、ウーバーイーツ側の出費が10億円増えることになります。
もし注文数が出費を補えるくらい増加していればいいのですが、増えていなかったら一気に赤字になってしまいます。
となると、事業の継続が困難になるかもしれません。
そうなったら日本徹底も可能性としてありえます。
げんに、Uberが撤退した事例は世界中でいくつかあります[9]Tech Crunch:Uber Eatsがチェコ、エジプトなど7カ国から撤退、成長が見込めるマーケットに注力。
会社がリスクをおかしてまで報酬を上げるとは思えない
配達員の報酬が上がったら、どのようなことが起こりそうかを整理すると
- ユーザーの利用料金が上がり、サービス全体の注文数が減るかもしれない
- 会社の業績が下がり、日本から事業を撤退するかもしれない
などが考えられます。
これらのリスクをおかしてまで配達員の報酬を上げるでしょうか?
個人的には、リスクをおかしてまで報酬を上げるとは思えません。
報酬が上がるとしたら、配達員が減ったときでしょうか。
けれど、報酬アップによって配達員が増えればまた報酬は下がる可能性が高いと思います。
もし配達員が従業員として雇ってもらえても未来は明るくない
最後に、もしウーバーイーツの配達員がウーバーイーツの「従業員」だと認定されたらどうなるかについても説明します。
ウーバーイーツの配達員は、いわゆる「個人事業主」です。
配達員はウーバーイーツから仕事の依頼を受けて配達をしている、とされています。
しかし実態として、配達員の働き方は従業員そのものではないか?という矛盾があります。
じつは、この矛盾は欧米をはじめとして、世界中で問題になっています。
イギリスでは、ウーバーイーツの配達員は従業員であると認める裁判結果もでています[10]毎日新聞:ウーバー運転手は「従業員」 英最高裁判決とギグワーカーの現状。
もし配達員がウーバーイーツの従業員になったらどうなるでしょうか。
変化としては
- 時給制になり、配達員にある程度の給料が保証・設定される
- 社会保険に加入できるようになる
- 有給休暇が取得できるようになる
などが考えられます。
すくなくとも、専業の配達員として働く人によっては良い変化だと思います。
しかし何度も言うように、ウーバーイーツは薄利多売のビジネスです。
配達員に対して有給を与えたり、社会保険に加入させるだけのお金の余裕はありません[11]従業員として配達員を雇用した場合、社会保険料の半額は会社の負担になり相当な金額になってしまうからです。。
ウーバーイーツのようなビジネスは、配達員が個人事業主だからこそ成立するものです。
もし配達員を雇用したりしたら、ウーバーイーツのビジネスモデルが成立しなくなってしまいます。
以上の理由から、わたしはウーバーイーツが配達員を従業員にすることは無いと考えています。
もし何かしらの法律の改正などによって配達員を雇用しないといけない状況になったら、そのときは事業継続ではなく撤退を選択するのではないでしょうか。
配達員の報酬アップはあまり期待できない
ここまで説明したように、ウーバーイーツの配達員の報酬アップはあまり期待できません。
なので、一時的にはお金を稼げても数年〜数十年単位で考えたら普通に働いた方がお金を稼げる確率は高いです。
では、どんな仕事がこれからお金を稼ぎやすいのでしょうか。
マイクロソフトの調査[12]Microsoft:Microsoft launches next stage of skills initiative after helping 30 million peopleによると、キーになるのは
「認知能力が必要な仕事」
です。
簡単にいうと、単純作業ではない、考える力が必要な仕事をする人が増えるとマイクロソフトは予測しています。
「認知能力が必要な仕事」の例としては、プログラマーが挙げられます。
マイクロソフトは2025年までに、ソフトウェアを開発するプログラマーなどが世界で約1億人不足すると予測しています。
むこう数十年単位で安定してお金を稼ぎたいなら、プログラミングなどを学ぶのが良さそうですね。
引用・脚注
↑1, ↑6 | Business Insider Japan:「ニンジンなしで走らされる」日本のウーバーイーツで報酬引き下げの知られざる背景 |
---|---|
↑2 | REUTERS:コラム:米ウーバー、配車事業への回帰が黒字化達成に唯一の道 |
↑3 | 提携店舗の募集、ユーザーのクーポン発行、ユーザーを集めるネット広告、配達員の募集する広告などにかなりのお金が使われているはずです。 |
↑4 | REUTERS:ウーバー、第1四半期は赤字縮小 運転手関連費巡る懸念で株価下落 |
↑5 | 官報決算データベース:Uber Japan株式会社 第8期決算公告 |
↑7 | 時事ドットコム:コロナで大普及!ウーバー配達員などフードデリバリー仕事経験者は1割超【ウィズコロナの多様な仕事観調査(2)】フードデリバリー就業意識調査Vol.1 |
↑8 | 日経新聞:ウーバーイーツ日本代表 「二兎追うものは三兎を得る」 |
↑9 | Tech Crunch:Uber Eatsがチェコ、エジプトなど7カ国から撤退、成長が見込めるマーケットに注力 |
↑10 | 毎日新聞:ウーバー運転手は「従業員」 英最高裁判決とギグワーカーの現状 |
↑11 | 従業員として配達員を雇用した場合、社会保険料の半額は会社の負担になり相当な金額になってしまうからです。 |
↑12 | Microsoft:Microsoft launches next stage of skills initiative after helping 30 million people |
コメント