転職サイトには
「適職診断(てきしょくしんだん)」
というサービスがよくあります。
このような診断は当たるのでしょうか?
結論を先に伝えると
「適職診断は絶対に当たらない」
とは言いきれませんが、当たる確率がとても低いです。
この記事では、適職診断が当たらない理由について説明します。
適職診断とは?
利用したことがない人のために、転職診断について簡単に説明します。
とてもシンプルに表現すると
- (適職を探している人が)20〜30個くらいのアンケートに回答
- 適した職業を教えてくれる
こんな感じの、無料サービスというかアンケートです。
Googleをつかい「適職診断」と検索すると
適職診断(無料) | 転職なら【キャリアインデックス】
というサイトが1位だったので、試しにやってみました。
どうやら私はIT・技術職に向いており、サービス・販売職にも適性があるようです。
残念ですが、私はどちらでもありません・・・。
大学生の頃にこの事実を知っていれば人生が変わったかもしれませんが・・・。
適職診断は無料ということもあり便利なサービスだと感じるかもしれません。
けれど、適職探しにはおすすめはできません。
占い感覚でテストするのは止めませんが、何も疑わずに結果を信じるのは良くないです。
なぜおすすめできないかを、これから説明していきます。
「適職」って何だろう?
そもそも適職ってどんな職業のことでしょうか?
まずは適職について考えましょう。
「その人の性格・スキルに向いている職業」が適職
「適職」という言葉の意味を辞書で調べると、適職には
その人の能力・才能などに合った職業。
引用元:適職(てきしょく) の意味
こんな意味があります。
その人の性格・スキルに向いている職業が適職、というのが一般的に定義になりそうですね。
もし性格やスキルに「合う仕事」と「合わない仕事」があったら、合う仕事の方が良いのは間違いありません。
けれど性格・スキルに合う職業はあなたにとって適職ですか?
どうでしょう?
適職の定義は人によって違う
あたり前のことですが、人はみんな違います。
仕事に何を求めるのか。
これも人によって異なります。
一緒に働いたことがある人たちや、社会人として働く友達の顔や行動を思い浮かべてください。
みんな仕事に何を求めていますか?
たとえば
こんな風に、仕事に何を求めるかは人によってバラバラです。
つまり、人によって適職は違うのです。
人の働き方は変化する
時代の変化によって働き方はどんどん変わります。
じっさい2020年にはテレワークが急に普及しました。
新しい職業もどんどん誕生しています。
ユーチューバーだって、2011年ころから盛り上がってきた職業です。
だから、もし今現在の適職が見つかったとしてもその職業が5年後も適職かどうかはわかりません。
時代も変わりますし、人は結婚や出産などのライフイベントによっても変わります。
だから、ざっくりと
「適職はこれだ!」
という風に診断するのは難しいです。
適職診断の信憑性は低い
まずは人によって「適職とは何か?」という定義が違い、時代によっても変わることを説明しました。
この時点で
「よくよく考えたら適職診断って何だろう?」
という疑問が浮かぶと思います。
つぎは適職診断そのものの信憑性についてです。
適職診断の結果はどれくらい信頼できるか、ですね。
適職診断は
- エニアグラム
- マイヤーズ・ブリッグス(MBTI)
などと呼ばれるテストをベースにして作られます。
これらのテストの結果で回答者を分類し、適職を導き出すというものです。
エニアグラムはボリビア出身の哲学者オスカーイチャーゾが1970年代の前半に発表したものです[1]nipponkaigi:オスカーイチャーゾ – Üreğil, BeypazarıWikipedia site:nipponkaigi.net。
マイヤーズ・ブリッグスは
- イザベル・マイヤーズ
- キャサリン・ブリッグス
によって1962年に発表されたものです[2]日本MBTI協会:実際の導入例および論文のご紹介。
どちらも適職診断に使われますが、科学的根拠があると証明されていません。
適職診断の結果にしたがって職業を選んだ人1000人をピックアップし、その後どうなったかなどは追跡されていないのです。
つまり、適職診断で仕事を選んだ人が適職につけたかどうかわかっていないのです。
マイヤーズ・ブリッグスに関しては
「テストを受けた人の約半分が5週間後のテストで別のタイプに分類された」
という研究結果があり、結局のところ雑誌の占いコーナー以上の効果は期待できません[3]APA PsycArticles:Cautionary comments regarding the Myers-Briggs Type Indicator.。
これでは適職診断は信憑性が高い、とは言えません[4]もちろん適職を紹介してくれる確率は0%ではないと思います。。
アンケートに答えるたびに適職が変わる
突然ですが質問をさせてください。
これらは、じっさいに適職診断の質問に使われているものです[5]キャリアインデックス: 適性・適職診断。
※文章の表現はわかりやすいように少し変えました
適職診断を受ける人はこれらの質問に対して
この5つの中から回答を選ぶのですが、これがまた難しいのです。
もし毎月同じ内容のテストを受けたとしても、すべての質問に同じ回答をすることはできないでしょう。
人の心はうつろいやすいモノです。
天候によって気分が変わったり[6]東京経済大学 経済学部ブログ:天候と気分次第で人の経済的行動は変わる?、その日の気温で性格が変わったりもします[7]WIRED:「性格は気候に影響される」という研究結果が、本当に意味すること
。
もしアンケートに回答する直前に仕事で失敗していたら、答えは変わるはずです。
アンケートの答えが変われば、診断結果が変わります。
おすすめされる適職も変わる、ということです。
これでは何のための適職診断をしているのかわかりません。
同じ業界・職業でも仕事内容や環境はぜんぜん違う
適職診断はあなたに向いている(と思われる)業界や職業を教えてくれるサービスです。
ここにも問題があります。
同じ業界や職業でも
などによって、仕事の内容や環境は変わります。
人によって適職は違うという話とかぶりますが、同じ業界・職業をひとくくりにするのは難しいのです。
だから
- 〇〇な人には
- 〇〇な仕事が向いている
という風にわかりやすく適職を紹介するのはかなり無理があると言えます。
適職診断はあてにならない
世の中にはたくさんの仕事があります。
そんな中から(基本的には)ひとつの職業を選ぶのです。
あまりにも選択肢が多すぎて、どんな仕事が自分に会うのかわからなくなるのは当然です。
けれど、適職診断で適職を探すのはおすすめしません。
ここまで説明してきたように、当たる理由や科学的根拠が乏しいからです。
将来的には
- 遺伝子情報
- 信用スコア
などを分析する技術によって適職がすぐわかるかもしれませんが、まだまだ先のことです。
今のところは、自分自身で適職を見つけるしかありません。
まずはじめに
「自分にとっての適職とはどんな仕事なのか?」
この質問を自分にしてみましょう。
自分にとっての適職をしっかり定義する。
適職探しはここから始まります。
引用・脚注
↑1 | nipponkaigi:オスカーイチャーゾ – Üreğil, BeypazarıWikipedia site:nipponkaigi.net |
---|---|
↑2 | 日本MBTI協会:実際の導入例および論文のご紹介 |
↑3 | APA PsycArticles:Cautionary comments regarding the Myers-Briggs Type Indicator. |
↑4 | もちろん適職を紹介してくれる確率は0%ではないと思います。 |
↑5 | キャリアインデックス: 適性・適職診断 |
↑6 | 東京経済大学 経済学部ブログ:天候と気分次第で人の経済的行動は変わる? |
↑7 | WIRED:「性格は気候に影響される」という研究結果が、本当に意味すること |
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