いそがしく働く社会人にとって、効率良く何かを学ぶことはとても大切です。
そして、効率良く学習したい人におすすめなのが
「ポモドーロ・テクニック」
です。
この記事ではポモドーロ・テクニックとは何かを説明し、さらに
- どんな効果があるか
- ポモドーロ・テクニックのやり方
- 実践するのにおすすめのアプリ
などを紹介します。
ポモドーロ・テクニックは基本的にはどんな人にもおすすめできるテクニックです。
ぜひ導入を検討してください。
ポモドーロ・テクニックとは?
はじめに
「ポモドーロ・テクニックとは何か?」
をかんたんに説明します。
ポモドーロ・テクニックの誕生
PTは一言でいえば「時間管理術」です。
時間を管理する方法、ですね。
PTには発明者がいます。
発明したのはフランチェスコ・シリロという男性です。
PTを発明したのは彼が大学生のときでした。
PTを発明する前の彼には
「勉強しないといけないのに集中できない」
という悩みがありました。
「あるある」と誰もが共感する、よくある悩みですよね。
フランチェスコ・シリロはこの悩みを、ある「ひらめき」から克服します。
大学生だった頃のフランチェスコ・シリロは、イタリアの首都ローマにある町で暮らしていました。
シリロは大学で社会学を学んでいて、試験の日がすぐ近くにせまっています。
けれどシリロは集中するのが苦手で、勉強のさいちゅうも気が散ってしまいます。
勉強しないといけないのに集中できず、どんどん試験の日が近づいていきます。
そんなとき、シリロは
「自分でも10分だけなら集中できるかもしれない」
と思いました。
そして部屋にあった赤い色のキッチンタイマーを10分にセットし、「10分だけ頑張る」と決意して勉強に取り組みました。
すると、おどろいた事に集中力がないシリロでも見事に集中できたのです。
10分間なら集中できることがわかったシリロは、何分間がもっとも集中できる時間かを自分で実験しました。
そして
- 25分間集中する
- 5分間好きなことをする
- また25分間集中する
- 5分間好きなことをする
- これを何回か繰り返したら少し長めの休憩をとる
というリズムがもっとも集中できることがわかりました。
つまり
- 集中
- 休憩
を交互に繰り返せば集中力が維持でき、さらに長い時間集中できることがわかったのです。
この実験で、時間の確認に使った赤いキッチンタイマーはトマトの形をしていました。
トマトはイタリア語では「ポモドーロ」という単語です。
だから、シリロはこの発明にたいして「ポモドーロ・テクニック」という名前をつけました。
これがポモドーロ・テクニックの誕生です。
ポモドーロ・テクニックは世界中で人気の時間術
PTはインターネットなどで世界中にひろがり、仕事や家事に追われる忙しい人たちの素晴らしい味方になりました。
いまではたくさんの時間管理術にかんする本やサイトで紹介されていて、PTのファンはどんどん増えています。
偶然によって誕生したPTは、いまは世界中でつかわれています。
ちなみに、PTを発明したフランチェスコ・シリロはげんざい起業しており、IT関係のコンサルタントとして活躍しているそうです。
PTに関する本も出しています。
PTを活用しているせいなのか、きっちり成功しているようです。
ポモドーロ・テクニックにはどんな効果があるのか?
フランチェスコ・シリロにとってPTの発明は人生を変えるような出来事でした。
世界中にPTのファンがいるように、シリロ以外の人々の生活も変えています。
なぜイタリアで生まれたこんなにシンプルな時間管理術が聖書の物語のように世界中に広まり、みんなに愛されているのでしょうか。
気になるのはPTによる「効果」です。
本当に誰でもPTを使えば集中力が上がるのか?
本当にずっと集中していられるのか?
集中と休息を繰り返すことによって、本当に疲れずに集中できるのか?
本当にPTを使えばあなたの集中力が上がったり、イライラが減るのでしょうか。
もしPTを試すなら
「これなら効果がありそう」
と納得してから実践したいですよね。
けれど、残念なことにPTの効果を調べる実験や論文は日本語では見当たりません。
英語でもPTの科学的根拠について調べた論文などは見つかりませんでした。
しかし、脳科学や心理学の実験によって
- 25分の集中
- 5分の休息
という集中&休息のリズムが人の脳にどんな影響を与えるかについては少しづつわかっています。
これらはPTの効果を証明したり裏付けるものです。
ここではいくつかの実験を紹介しながら
「ポモドーロ・テクニックにはどんな効果があるのか?」
を紹介します。
休憩をはさむことによって集中力が上がる
ポモドーロ・テクニックには「集中力アップ」の効果が期待できます。
すでに説明しましたがPTは
- 集中
- 休憩
を繰り返すテクニックです。
実験によって「休憩が集中力向上につながる」という結果がすでに出ているので、それらを見ていきましょう。
勉強で集中できる時間は40分?
「パパは脳研究者 ~子どもを育てる脳科学~」などの本で有名な東京大学の池谷裕二教授と「進研ゼミ」で有名な株式会社ベネッセコーポレーションが、中学生が勉強しているときに集中力がどれくらい続くかを調べる実験をしました。
実験を紹介した朝日新聞の記事をリンクしておきます。
朝日新聞 勉強時間は短い方が好成績?
この実験を簡単に説明すると
- 休みを挟んで合計45分間勉強する中学生(15分の勉強→7分半の休憩→15分の勉強→7分半の休憩→15分の勉強)
- 休みなしで60分間勉強する中学生
この二人を比較し、どちらがより集中できるかを調べた実験です。
言い換えると「休憩が集中力にあたえる効果」を調べる実験ですね。
中学生が集中できているどうかは脳波の変化で確認します。
なぜなら、脳波のパターンのひとつである「ガンマ波」を調べれば集中力の変化がわかるとされているからです。
集中力が上がればガンマ波が上がり、集中力が下がればガンマ波が下がる、という関係です。
ガンマ波の変化を示した画像を朝日新聞の記事から引用します。
まずは、休みなしで60分間勉強した生徒のガンマ波の変化をグラフで見ましょう。
ガンマ波の数値は勉強を開始したタイミングが最も高く、その後は基本的に下降していきます。
とくに40分を過ぎたあたりからの下がり方が目立ちますね。
見事に失速しています。
これは、そのまま集中力が下がっていることを示しています。
次は
休みを挟んで合計45分間(15分の勉強→7分半の休憩→15分の勉強→7分半の休憩→15分の勉強)
こっちの生徒のガンマ波の変化を見ましょう。
15分単位で上がったり下がったりしていることがわかります。
山あり谷ありの折れ線グラフになっています。
休憩をはさむと、そのたびに集中力が上がっていますね。
2回目の休憩のあとは勉強を開始した直後よりもガンマ波が高くなり、もっとも高い数値を記録しています。
この実験から、長い時間にわたって集中するためにはPTを実践したときのように、適度に休憩をとった方が良いことがわかったのです。
集中力が必要な作業は30分くらいが限界
もうひとつ、人の集中力について調べた実験を紹介します。
大阪大学の臼井伸之介教授によると、人の集中力は30分くらいから急に下がるそうです。[1]夢ナビ:うっかりミスはなぜ起こる?
これは「クロックテスト」という実験でわかったことです。
クロックテストは人の集中力をテストする実験です。
クロックテストの実験では2時間にわたって時計のような器具をみつめます。
そして針が2秒ぶん時計回りに進んだら手元にあるスイッチを押します。
時間の経過によってスイッチを押すタイミングに誤差が現れるかを確かめるのです。
おそらく、この実験は最初に紹介した東大×ベネッセの実験よりも高い集中力が求められます。
地味な作業が苦手な人にとって拷問のような実験ですね。
すでに伝えたように、クロックテストでは30分くらいから急にミスが増えます。
先に紹介した中学生に実施した実験では、40分頃から休息に集中力が下がりました。
二つの実験の結果からは、人の集中力が持続するのは30〜40分くらいではないか?と考えることができそうですね。
臼井伸之介教授は実験を紹介する記事のなかで
30分くらい経つと見落としが急に増えます。これを注意の“30分効果”と言います。この理由は疲れではなく、同じことをしていると飽きてくる「心理的飽和状態」に陥るからです。だから少し冗談を言ったり、気分転換したりして、注意を持続させることが大切です。
引用元:うっかりミスはなぜ起こる
このように書いています。
休憩とはいかなくても、やはり気分転換は大事ということですね。
休憩がある方が勉強の成績があがる
まず最初に集中力と休憩の関係についての実験を紹介しました。
つぎは
「勉強の成績と休憩の関係」
について調べた実験です。
さきほど紹介した東京大学の池谷裕二教授とベネッセが行った実験を思い出してください。
じつは、この実験では
「休憩による集中力の変化」
だけでなく
「休憩によるテストの成績の変化」
についても一緒に調査していたのです。
テストの成績についての実験でも、中学生を
- 休みを挟んで合計45分間(15分の勉強→7分半の休憩→15分の勉強→7分半の休憩→15分の勉強)
- 休みなしで60分間
この二つのグループに分け、決められた時間で勉強してもらいました。
そして、実験として勉強をする前に生徒に実施したテストの点数と
- 勉強した直後
- 勉強した1日後
- 勉強した1週間後
これら3回のタイミングでおこなったテストの点数を比較し、どれくらい差が開くかを調査しました。
たとえるなら、勉強では駅をすっとばす「特急列車」と各駅でとまる「鈍行列車」のどっちが先にゴールに着くのか、ですね。
実験の結果を伝えると、先にゴールしたのは「鈍行列車」の方です。
ただし走行距離が長いときは、という条件がつきます。
実験のくわしい結果や、この実験でわかったことを説明しますね。
それぞれのテストのタイミングごとでの実験の結果は
- 勉強した直後→60分間グループの方が点数の伸びが上
- 勉強した1日後→45分間グループの方が点数の伸びが上
- 勉強した1週間後→45分間グループの方が点数の伸びが上
このようになりました。
勉強した直後は60分グループの方が上でしたが、翌日以降は45分間グループの方が点数の伸びは上でした。
しかも
- 勉強した1日後にしたテスト
- 勉強した1週間後にしたテスト
で比較すると、1週間後のテストの方が成績の差がより開きました。
ここで、「集中力」と「勉強の成績」の実験結果からわかったことを整理しましょう。
- 人が集中できる時間は30〜40分間
- 続けて40分以上頑張っても集中力は下がり続ける
- 数分間でも休憩をはさむと集中力は回復する
- 長期間にわたって学んだことの効果を期待したいなら休憩をはさんで学ぶ
このようになります。
つまり、これらの実験は集中と休憩を繰り返すポモドーロ・テクニックの効果を間接的に裏付けています。
これらの実験は大人にも参考になるものです。
これからの時代、働く大人もどんどん新しいことを学び、リスキリングをするのが当たり前になります。
しかし、忙しく働く社会人が満足に勉強時間を確保することは難しいです。
だから大人は休みを入れずに勉強してしまいがちです。
けれど、休みなしで勉強を続けることは逆効果になるかもしれません。
もし効率的に学びたいなら、適切に休みをはさみましょう。
休息が脳によい影響を与える
ここまでの内容で、休息が集中力アップや記憶力向上によい効果が期待できることがわかりました。
休息には他にもたくさんの良い効果があります。
ここではハーバード大学医学大学院のスリニ・ピレイさんが主張している内容をいくつか紹介します。[2]ダイヤモンド・オンライン:これで一生衰えない!最新理論でわかった「脳の鍛え方」
まず挙げられるのは「リラックス効果」です。
人は集中していない状態だと、脳の中心に近い部分にある「扁桃体(へんとうたい)」という部分の活動が穏やかになります。
これはつまり「リラックス状態になる」ということです。
いま注目されている「マインドフルネス」でも同じような効果が期待できます。
休息によって物事を冷静に、客観的に捉えられるようにもなります。
これは、だいたいおでこの奥のあたりにある「前頭極(ぜんとうきょく)」という脳の部位が働くからです。
つい主観による思い込みで行動や発言してしまう人は、ぜひ休息を生活に取り入れてください。
メタ認知の能力が高い人は学校の成績が良かったり、仕事がデキる、と言われています。
休息にはほかにも「疲労」を減らす効果があります。
これは脳内の前頭前皮質(ぜんとうぜんひしつ)という部位が正常に働くようになるからです。
スリニ・ピレイさんは集中と非集中(休息)について、以下のようにも語っています。
集中と非集中のスイッチを切り替えるすべを学べば、ストレスやリスクへの対処方法、人生との向き合い方などにおける、大きな変化が待っているだろう。きっと、あなた自身も知らないあなたのすばらしい一面が見つかる。そして、気移りしやすい自分の性格が嫌いでなくなるだろう。
やはり、人にとって休息は重要なのです。
ポモドーロ・テクニックのやり方
ここまでで、ポモドーロ・テクニックの効果がわかったと思います。
ここからは、具体的にポモドーロ・テクニックのやり方を説明します。
時間を確認するタイマーを決める
ポモドーロ・テクニックは時間管理術です。
だから、時間を確認するためのタイマーが必要です。
けど普通のお家にはタイマーがないと思います。
じゃあタイマーを買うべきかというとそんなことはありません。
スマホのアプリで事足ります。
おすすめのアプリは「Focus To-Do: ポモドーロ技術 & タスク管理」です。
ダウンロードできるリンクをはっておきます。
もし
- 在宅勤務で子供が近くにいるからスマホを置きたくない
- デジタルツールではなくアナログツールで時間を管理したい
などの理由でスマホが嫌ならamazonで
「キッチンタイマー」
と検索すれば、タイマーがすぐみつかります。
どうしても「ポモドーロ」つまりトマト型のタイマーが欲しかったら
「キッチンタイマー トマト」
と検索すればたくさんヒットします。
けど、あまりこだわる必要はありません。
使い勝手がよかったり、好きなデザインのタイマーを選んでください。
まずは25分の集中+5分の休憩でやってみる
タイマーを手に入れたら、あとは実践です。
まず最初は
- 25分の集中
- 5分の休憩
というオーソドックスな時間で設定し、仕事や家事などで2時間ほど試してみましょう。
もし途中で集中力の低下を感じたら5分よりも長い休憩をとってリフレッシュしてください。
試してみて
「時間を変えた方がいいかな?」
と感じたら、どんどん変えてください。
そして、自分の生活や性格にあった時間を探しましょう。
ただ、かならず休憩は入れてください。
PTは集中→休憩をくりかえすテクニックです。
自分に合った集中→休憩のタイミングを手にいれましょう。
休憩中はリラックスできることをする
日本人にとって休息はなぜか悪者になっています。
けれど、ここまで読んでくださった方にはより良く生きるために休息が必要だということがわかったです。
だから、PTで集中したあとは遠慮せず休憩をとってください。
「休憩って何したらいいの?」
と思うのも日本人らしい考え方です。
休憩ですることは、シンプルに「リラックス」です。
疲れを取るためにおすすめなのは
- マインドフルネス瞑想
- 深呼吸しながらのストレッチ
などです。
けれど、もっとも大事なことは
「あなたがリラックスできるかどうか」
なので、あなたがリラックスできることをやりましょう。
漫画や小説を読んでもいいし、目をつぶって横になってもいいです。
リラックスし、脳の疲労をとって機能を回復させてください。
それが記憶力アップ・ストレス解消・生産性向上などにつながります。
効果を確認する
すでに説明したようにポモドーロ・テクニックには
- 集中力アップ
- 記憶力アップ
- ストレスや怒りをコントロール
- 疲労を減らす
などの効果があります。
他にもサブ的な効果として
- 集中する時間が決まっているので自然とシングルタスクになる
- 集中する時間が決まっているので時間の管理が上手になる
なども期待できます。
シングルタスクだと集中力や生産性がアップすると言われています。
PTを実践してみて、このような効果を感じたらそのまま続けてみてください。
もし効果を感じなかったら次のことを試してみましょう。
- 集中と休憩の時間を変えてみる
- 休憩中にすることを変えてみる
- 集中するときにシングルタスクを意識する
自分に合った時間をみつけ、なおかつシングルタスクが習慣化されたらきっと
- イライラ
- ストレス
- 疲れ
とさよならできるはずです。
長期的に学習するならポモドーロ・テクニックがおすすめ
長くなりましたが、ポモドーロ・テクニックに関する説明は以上です。
PTの効果、やり方はわかったらあとは生活に取り入れるだけです。
社会人が何かを学ぶとき、短期間で終わるものはあまりないはずです。
ポモドーロ・テクニックは長期間にわたって何かを学習する人におすすめのテクニックです。
もし学び直しやリスキリングを検討しているなら、ぜひポモドーロ・テクニックを導入してください。
引用・脚注
↑1 | 夢ナビ:うっかりミスはなぜ起こる? |
---|---|
↑2 | ダイヤモンド・オンライン:これで一生衰えない!最新理論でわかった「脳の鍛え方」 |
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