「リスキリングが必要だ!」
という言葉をよく聞くようになりました。
けれど、何からはじめれば良いかわからない人は多いと思います。
カナダにSkyHive(スカイハイブ)という、リスキリングサービスを提供している企業があります。
この企業のサービスが、いま世界中の大企業から引っ張りだこになっています[1]日経新聞:リスキリングで挑む(中)人材磨き生産性向上――倉庫作業員、先端IT習得。。
SkyHiveが運営するサービスについて調べていたら、リスキリングを成功させるヒントのようなものが見つかりました。
どうやら、リスキリングで大事なのは
- 保有するスキルを言語化して可視化すること
- スキルに対する需要と供給を把握すること
この二つのようなのです。
そして、とくに大事なのは
「保有するスキルの言語化・可視化」
です。
この記事ではSkyHiveのサービスを紹介しながら、リスキリングでは何が大事なのかを説明します。
「リスキリングしたいけど、何からはじめたらいいかわからない・・・」
このような悩みを持つ方はぜひ読んでください。
SkyHiveが運営するスカイパスポートのサービス内容
SkyHiveは
「量子労働分析(Quantum Labor Analysis)」
と呼ぶ、AIをつかった技術をもっています。
この技術をつかい
- 働く人のスキル
- 労働市場で需要が高いスキル
などを分析しているのです。
ただ残念なことに2021年現在、日本ではサービスを提供していません。
SkyHiveは量子労働分析の技術を活用し、働く人向けに
「スカイパスポート」
というサービスを運営しています。
そして、このサービスがリスキリングについて考える上でとても参考になります。
なので、まずはスカイパスポートのサービス内容を紹介します。
登録する人が保有しているスキルを可視化
スカイパスポートは無料サイトで、利用する人はまず会員登録します。
そして
などのデータを登録します。
するとAIが登録した人のデータを分析し、自動的にその人のスキルを
などの項目に分け、細かく抽出してくれます。
これにより、登録した人は自分がどんなスキルを持っているかを客観的に把握できます。
目に見えないのでわかりにくいスキルが
- 可視化
- 言語化
される、ということですね。
スキル的にマッチングしそうな仕事を提案
スカイパスポートの機能はスキルの抽出だけではありません。
スカイパスポートを運営するSkyHiveは労働市場のデータをリアルタイムで収集・分析しています。
求人情報などを分析し、どんなスキルがいま需要が高まっているかなどをデータで把握してるのです。
なので、スカイパスポートには登録した人にたいしてスキル的にマッチングしそうな(相性が良さそうな)仕事を提案してくれる機能もあります。
さらには、登録者がリスキリングすることで将来的に転職に成功しそうな職種も教えてくれます。
リクルートワークス研究所がSkyHiveの創業者ショーン・ヒントン氏におこなったインタビューでは、創業者みずから以下のような事例を紹介しています[3] … Continue reading。
例えば、小売り店舗の営業担当の仕事だった人に対しては、リスキリングを通じてデジタルマーケティング担当などの選択肢を示すことがあります。
引用元:リスキリングのプラットフォーム提供を通じて、社会課題の解決を目指す。カナダの人材教育ベンチャーSkyHiveの取り組み
ようは本人は気づいていないけど、求められるスキルをあるていど満たしている将来有望な仕事を提案してくれる、ということですね。
仕事とスキルにギャップがあればリスキリングを提案
もし登録した人が希望する仕事に就くのに必要なスキルがない場合、スカイパスポートはリスキリングを提案してくれます。
「あなたがこの仕事がしたくても、この仕事をするのに必要な〇〇のスキルが足りません。だから〇〇のスキルを身につけてください」
という風な提案をしてくれるのです。
リスキリングする講座についてはスカイパスポートが無料で提供してくれます。
このあたりはSkyHiveがカナダ政府と提供していることもあり、税金が投入されているということでしょう。
このような感じで、スカイパスポートは求職者に足りないスキルを明確にしてくれます。
そして、不足しているスキルのリスキリングを提案してくれます。
リスキリングすればスキルが身に付き、スキル的には就職しやすい状態になります。
だから、求職者は意欲的にリスキリングに取り組めるのです。
リスキリングはスキルの可視化と人材マーケットの分析が大事
ここまで、SkyHiveが運営するスカイサポートがどんなものかを簡単に説明しました。
ここからは
「なぜSkyHiveは世界中で引っ張りだこなのか?」
この理由を考えてみます。
ここに、リスキリングを成功させるヒントがありそうだからです。
世界中でスキルのギャップが広がっている
つきつめると、求人市場は
- 企業が働き手に求めるスキル
- 仕事を探している人が保有するスキル
この両者をマッチングする場です。
しかし、さいきん両者にギャップが広がっています。
企業が働き手に求めるスキルを持っている求職者が少なくなっているのです。
こうなると、良いマッチングは生まれません。
あらためてスカイサポートを仕組みを見ると、スカイパスポートは
- 企業が働き手に求めるスキル
- 仕事を探している人が保有するスキル
両者のスキルのギャップを埋めるサービスとも言えます。
スキルのギャップを埋めると
- 企業は欲しい働き手がみつかる
- 仕事を探している自分のスキルを活かせる仕事に就ける
という、マッチングの好循環が生まれます。
だからこそ、スカイサポートのようなサービスは世界中から引っ張りだこなのです。
自分のスキルを言語化し可視化している人は少ない
求められているスキルと保有するスキルにギャップがあるということは、働きたい人はリスキリングする必要になる、ということです。
けれど、自分で自分のスキルを言語化し、可視化している人は少ないと思います。
それに、自分の能力・スキルを客観的に把握することは難しいです。
SkyHiveの調査によると、どうやら人には自分が保有するスキルを低く見積もりがちなバイアス(思考の偏り)があるようなのです。[4]World Economic Forum:This is how AI can unlock hidden talent in the workplace。
なので、バイアスの働きで
「自分は評価されるスキルを持っていない・・・」
と思っていても、じつはそんなことは無い可能性だってありえるのです。
リスキリングに成功するためには、まずは自分のスキルを正しく判断することが大事です。
でないと、自分のスキルとマッチングする仕事が見つけられません。
企業が求めるスキルと自分の保有するスキルとのギャップを見つけることもできません。
だからこそ、データをもとに人工知能が客観的に判断するスカイサポートのようなサービスに需要があるのです。
マーケットを意識してリスキリングする人は少ない
求人市場は男女が出会うマッチングアプリと同じような、マッチングの場です。
なので、マッチングしやすいスキルを身につけることが大事です。
けれどマーケット、つまり求人市場のニーズを意識しながらリスキリングする人は少ないと思います。
そもそも、なぜか日本で働く人は
- やりたいこと
- 好きなこと
などを軸に仕事を決めることが多いです。
就活してる学生に対して実施したアンケートを見ても、仕事を選ぶとき
「自分の能力や専門スキルなど活かせること」
を条件にしている人は少ないです[6]PRTIME:【22卒就活調査】会社選びで重視することは「社風が合うこと」。
保有するスキルで仕事を選ぶ人はあまりいないのです。
これまでは、スキル以外を基準にして仕事を選ぶ方法でも何とかなったかもしれません。
しかし、三菱総合研究所の調査によると、これからは専門・技術職以外の仕事はどんどん減っていきます[7]株式会社三菱総合研究所:大ミスマッチ時代を乗り超える人材戦略 第2回 人材需給の定量試算:技術シナリオ分析が示す職の大ミスマッチ時代。
となると、専門的なスキルを持っていない人の仕事はなくなる一方です。
見方を変えると、専門的なスキルを持っている人は仕事に困りません。
さきほど紹介した三菱総合研究所の調査では、以下のようなデータが発表されています。
こうした中で、恒常的に不足するのが専門技術職人材だ。技術革新をリードしビジネスに適用する専門技術職人材は、2030年時点で約170万人不足すると見込まれる。職の大ミスマッチ時代の到来である。
このようにマーケットを見て、必要なスキル(専門技術職人材になれるスキル)があればいくらでも仕事が選べるのです。
だからスカイサポートのようなマーケットを分析し、何をリスキリングすればいいか教えてくれるサービスに需要があるのです。
まずはスキルを言語化して可視化してみよう
skyHiveのスカイサポートの成功は
- リスキリングはスキルの言語化・可視化からはじめること
- 人材マーケットを意識してリスキリングすること
この二つが大事だということを教えてくれます。
どちらも個人でするのは簡単ではありません。
ですが、まずはどちらかというと簡単な、スキルを言語化して可視化することからはじめましょう。
そうすれば、いまの自分に足りないスキル、逆にアピールできるスキルが見つかるはずです。
このとき
「人には自分が保有するスキルを低く見積もりがちなバイアス(思考の偏り)がある」
ということを意識してください。
まずはどんなスキルでも、自分が持っているスキルを全部紙などの書きだして可視化しましょう。
これがリスキリングに向けた第一歩になります。
引用・脚注
↑1 | 日経新聞:リスキリングで挑む(中)人材磨き生産性向上――倉庫作業員、先端IT習得。 |
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↑2 | Business Wire:Accenture Launches Project Spotlight, a New Approach to Venture Capital |
↑3 | リクルートワークス研究所:リスキリングのプラットフォーム提供を通じて、社会課題の解決を目指す。カナダの人材教育ベンチャーSkyHiveの取り組み |
↑4, ↑5 | World Economic Forum:This is how AI can unlock hidden talent in the workplace |
↑6 | PRTIME:【22卒就活調査】会社選びで重視することは「社風が合うこと」 |
↑7 | 株式会社三菱総合研究所:大ミスマッチ時代を乗り超える人材戦略 第2回 人材需給の定量試算:技術シナリオ分析が示す職の大ミスマッチ時代 |
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