この記事では
「2030年に最も必要になるスキル」
として社会人や学生から注目されている
「戦略的学習力」
について説明します。
戦略的学習力があればスキルを効率よく学べ、社会で生き残れる確率が高くなります。
とても役に立つスキルなので、ぜひ戦略的学習力を身につけてください。
「戦略的学習力」という言葉の意味
戦略的学習力の説明をするまえに、言葉の意味を知っておきましょう。
このような新しい言葉は、意味を知っておいた方がイメージしやすいからです。
戦略的学習力は
- 戦略的
- 学習力
という二つの言葉に分けられそうですね。
「学習力」とは教科書や動画などを見て学習する力のことです。
これは何となくイメージできますよね。
つぎは「戦略的」です。
「的」は置いておいて「戦略」とは何のことでしょう。
辞書をひいて「戦略」という言葉の意味を調べると
長期的・全体的展望に立った闘争の準備・計画・運用の方法。
とあります。
戦略的と学習力を組み合わせると
「広い視野で計画を立てて学習する力」
という意味になりそうですね。
じっさい戦略的学習力にはこれに近い意味があります。
理解のヒントになるので覚えておいてください。
「戦略的学習力」とは?
なんとなく言葉の意味がわかったと思うので、本題に進みます。
戦略的学習力とは何かを説明します。
戦略的学習力は「勉強の攻略法」のこと
戦略的学習力とは、わかりやすく言うと「勉強の攻略法」のことです。
ゲームの攻略法を調べたりしたことはありませんか?
攻略法は最短ルートでゴールにたどり着くために調べますよね。
これと同じことです。
勉強にも、最短ルートでゴールにたどり着く方法があるのです。
この勉強の攻略法が「戦略的学習力」と呼ばれるスキルです。
なぜ戦略的学習力が注目されているのか
戦略的学習力が注目されるようになったのは最近のことです。
戦略的学習力という言葉は数年前まではほとんど使われていませんでした。
使われるようになったのは2017年頃からです。
なぜ最近になって「戦略的学習力」が注目されるようになったのでしょうか?
きっかけになったのは、オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授(発表当時)が発表した
「スキルの未来」
という論文です。
このなかで
「2030年のアメリカで最も必要とされるスキル」
として戦略的学習力が紹介されたのです。
もちろん現在(2021年)でも戦略的学習力には価値があります。
もし戦略的学習力があれば、学生だけでなく社会人も短い学習時間で多くのことを学べます。
戦略的学習力は生きていくための素晴らしい武器のようなものなのです。
戦略的学習力を学ぶメリット
ここまで戦略的学習力について基本的なことを説明しました。
つぎは、戦略的学習力がどんな風に役立つかを説明します。
効率的に学習できる
友達や同僚に、すごく勉強しているけど成績や評価が上がらない人はいませんか?
このような人には戦略的学習力が欠けているのかもしれません。
戦略的学習力があると、効率的に学習ができます。
戦略的学習力があれば
- いくら勉強してもスキルアップしない
- 学んだことをすぐ忘れてしまう
などが確実に減り、結果的に「勉強時間の時短」ができます。
やっぱり勉強や仕事だけでは人生つまらないですし、遊んだりもしたいですよね。
スポーツしたり友達と遊んだり、いろいろな事をしたい人にこそ戦略的学習力はオススメです。
デキる人の勉強方法がわかる
さきほどこの記事のなかで
友達や同僚に、すごく勉強しているけど成績や評価が上がらない人はいませんか?
このような人には戦略的学習力が欠けているのかもしれません。
このように書きました。
逆に、ぜんぜん勉強していないように見えるけど仕事がデキる人もいますよね。
「勉強してないよ」と言っているけど、なぜか仕事がデキる。
こんな人は戦略的学習力を身につけているのかもしれません。
勉強していないのにデキる人は
- いちど聞いたり読めば、大抵のことは理解できる
- 少ない勉強時間でたくさんの成果を得ている
このどちらかです。
つまり、とても効率よく学んでいるのです。
効率よく学習するためには、戦略的学習力が欠かせません。
もし戦略的学習力を学んだら、天才のようにしか見えない人の頭の中をのぞけるかもしれませんね。
天才と呼ばれる人の発想方法や物事のとらえ方を学べるのです。
戦略的に学習する方法
ここからはみなさんが最も知りたいであろう、戦略的に学習する方法を紹介します。
ここで紹介するのは
- 心理学
- 脳科学
- 認知心理学
- 学習科学
などの学問分野の研究によって「効果が高い学び方」と証明されているものばかりです。
科学的根拠がある効率的な学習方法、とも言えますね。
覚えたい内容を「クイズ」にして自分に質問する
良い学習方法のひとつ目は「クイズ」です。
そう、あのクイズです。
簡単に出来るので意外かもしれませんが、クイズはとても効果的な勉強方法なのです。
おすすめの方法はフラッシュカードをつかったクイズです。
「単語帳」とも呼ばれる、定番のあれですね。
まず、覚えたい内容のクイズをつくりフラッシュカードに書き込んでください。
このとき1枚のフラッシュカードに書き込むクイズは1問にした方が効果的です。
たとえば
「スティーブ・ジョブスのプレゼンが優れている理由を説明せよ」
というふうな感じです。
そして裏に答えを書いてください。
スマホでつかえる無料の学習用アプリでもフラッシュカードの代わりになるものはたくさんあります。
なぜクイズが学習に効果的なのでしょうか?
簡単に説明します。
人の脳にある記憶は、たとえるなら数えきれないくらい沢山の箱がおいてある巨大な倉庫です。
学習した内容は「箱」になり、倉庫内にどんどん積まれていきます。
もし倉庫にたくさんの箱が無造作にバラバラに積まれてたら、取り出したい箱を見つけにくいですよね?
だから、取り出しやすいように倉庫の中を整理しなくてはいけません。
クイズを出し、それに答えると倉庫のなかの箱が整理されるのです。
バラバラに、適当に積まれていた箱が綺麗に積みなおされるイメージです。
箱が綺麗に整理されていると、記憶の中から取り出しやすくなります。
ものすごく簡単に説明しましたが、クイズにはこのような効果があります。
とてもシンプルな方法ですが効果はとても大きいのでオススメです。
それに、誰でもかんたんに出来る方法でもあります。
検索練習については世界中で効果を裏付ける論文が発表されており[1]Science:Retrieval practice protects memory against acute stress、信頼性が極めて高い優れた学習方法です。
覚えたい内容を自分の言葉で要約する
覚えたい内容を自分の言葉で要約することも効果的です。
何かを学ぶとき、次のことをやってみてください。
- 重要な部分がどこかを探す
- 覚えたい内容を自分の言葉で要約する
このようなことをすると能動的な学習になり、良い学習方法となります。
つまり要約という作業で自分の頭を活動させるのですね。
すると、学習した内容が記憶に残りやすくなります。
覚えたい内容を誰かに説明する
3個目は
「覚えたい内容を誰かに説明する」
です。
先に伝えておくと、説明するのは他人ではなくて自分にでもOKです。
要はインプットしたいことを「アウトプット」する、ということです。
これも効果的な学習方法として有名です。
自己説明については「Inducing Self-Explanation: a Meta-Analysis」などの論文で効果が実証されています。
ここで、先にあげた2つの勉強法を思い出してください。
- 覚えたい内容を、クイズにして出す
- 覚えたい内容を自分の言葉で要約する
この2つでしたね。
人に何かを説明するとき、頭の中はどんな風に活動するでしょう?
仕事で大事なことを上司に説明したときのことを思い出してください。
頭のなかで
- 説明する内容を思い出す
- 大事な部分を要約する
この2つの活動をしませんでしたか?
これは、そのまま良い学習方法と一緒ですよね。
人に何かを説明するのは、ものすごく頭を使います。
もし覚えたいことがあったら覚えたい内容を自分に説明してみてください。
意外とうまく説明できないことがわかるはずです。
何かを上手に説明するには、自分がそれをきちんと理解しないと難しいです。
だからこそ、自己説明は効果的な勉強方法になるのです。
目的を決めて、学習計画を立てる
4つめの勉強方法は
「目的を決めて、学習計画を立てる」
です。
学生のころ
「なんで勉強なんかしないといけないんだろう・・・」
と思ったことはありませんか?
勉強する意味がわからないと、モチベーションが上がらないですよね。
それもそのはずで、人は自分にとって意味がないことが苦手なのです。
例をあげましょう。
あなたはゴミが散乱している汚い道を歩いています。
そのとき知らないオジさんが近づいてきて
「道が汚いから掃除してください」
と言われたらやる気がでますか?
でないですよね。
けれど、オジさんから
「目が不自由な人は道にある点字ブロックを確認しながら歩いています。道が汚いと点字ブロックが確認できないのでとても危ないです。目が不自由な人のために、道を掃除してくれませんか?」
とお願いされたらどうでしょう。
掃除しないといけないな、と思いませんか?
この場合、「意味」は「目的」と言い換えることができます。
自分のモチベーションを上げるためにも、学習するときは何か目的を決めましょう。
そして、その目的を達成するためには何をしなくてはいけないかを考えてください。
登山するとき、登山のルート(道順)を決めないで登るっても迷子になるだけですよね?
けれど、事前にルートを決めておけば効率よく山に登ることができます。
学習も同じで、目的地に行くためのルートを計画すると効率が上がります。
- 目的を決める
- そして目的に到達するための計画を立てる
これが、4つめの勉強の攻略法です。
計画を作るのが難しいときは、目的を決めるだけでもOKです。
学ぶ目的(意味)があるだけで、人はけっこう頑張れるものです。
休憩による気分転換や睡眠をしっかりとって学習する
5つめの方法は「休息」に関するものです。
人はつい
- 休憩する時間
- 睡眠時間
など削って勉強してしまいますが、きちんとした休息をとらないで勉強することは学習に悪い影響をあたえます。
学習において睡眠はとくに大事です。
というのも人は睡眠中に記憶したことを整理するからです。
起きているときに得た情報を、寝ているときに整理するのですね。
だから、人は睡眠不足だと物忘れが激しくなります。
こまめに休憩を取ることも大事です。
仕事しているときや学習しているとき
- 25分間集中する
- 5分間の休憩をとる
このように集中→休憩を交互にとる
「ポモドーロ・テクニック」
という方法があります。
定期的に休息を取り入れると学習効率が上がったという実験結果もあります[2]朝日新聞デジタル:勉強時間は短い方が好成績?。
もし休みなしでずっと仕事をしたり勉強をしているなら、ぜひポモドーロ・テクニックを試してください。
自分のレベルに合った内容を学ぶ
最後に紹介するのは
「自分のレベルに合った内容を学ぶ」
です。
何か目的や意味をみつけ、勉強に対するモチベーションがあがったとき、人は背伸びしがちです。
いまの自分の知識よりも、レベルがずっと高い内容のテキスト・参考書などを選んでしまうのです。
自分の知識のレベルよりも明らかに上の内容を学ぶのは、効率が悪い勉強方法です。
人は自分がすでに持っている知識をつかって新しいことを理解します。
たとえば
「YouTuberのヒカキン」
という言葉があります。
この記事を呼んでくれている人は、おそらく「YouTuberのヒカキン」を頭の中にイメージできるでしょう。
ではYouTubeを知らない老人が聞いて理解できるでしょうか?
スマホを持っておらず、なおかつYouTubeのことを知らない人にとっては
「YouTuberのヒカキン」
という言葉はまるで外国語のようです。
まったく理解できないでしょう。
自分の知識のレベルよりも明らかに高いレベルの内容を学ぶのは、これと一緒なのです。
効率が悪いというか、これでは勉強以前の問題ですよね。
だから何かを学ぶときは、学習する前に学ぶ対象について自分がどれくらい知っているかを考えましょう。
自分の知識について考えるのです。
このような、自分自身の知識や思考について考えることは
「メタ認知」
と呼ばれます。
メタ認知がしっかりできる人は学習が得意というだけでなく、仕事がデキたり自分の感情のコントロールが上手だと言われています。
学ぶ対象について、自分の知識がどれくらいなのかを理解したら、自分のレベルにあった教材を選んでください。
ただ、簡単すぎても難しすぎてもいけません。
選ぶべきなのは、自分が知っていることよりも少しだけ難しいことが書いてある教材です。
そうすると、あなたが知っている知識と、教材に書いてある知識がくっつきます。
「くっつく」とは理解できる、ということです。
つまり「わかる」ということですね。
もし勉強していて「わかった」と感じたら、友達や自分にその内容を説明してみてください。
上手に説明できたら、さらに「わかった」が深くなり、忘れにくくなります。
もし上手に説明できなかったら、わかるまで勉強してみましょう。
この繰り返しが、理解を深めてくれるのです。
学ぶスキルを戦略的に選ぶことも大事
ここまで、戦略的学習力を「勉強法の攻略法」として説明してきました。
けれど戦略的学習力には勉強の攻略法以外の意味もあります。
それは、学ぶスキルを戦略的に選ぶ、ということです。
「学ぶスキルを戦略的に選ぶ」とは?
「学ぶスキルを戦略的に選ぶ」とはどういうことかを説明します。
2021年のいま、人工知能をつかった車の自動運転や、自動で物を運ぶロボットに関する技術が注目されています。
その流れで、プログラミングやデータ分析などのスキルを学べる専門学校やオンライン教育がすごく増えています。
こんな状況のなか、10代の若者が
「世界一の御者になる!」
と決意し、馬車を早く動かす技術を必死に勉強したら将来どうなるでしょう。
日本でプロの馬車の御者として生活していけるでしょうか。
たぶん難しいですよね。
けれど、人工知能のプログラミングを10代のうちから勉強していたらどうでしょう。
すくなくとも会社には就職でき、普通の給料はもらえそうですよね。
戦略的にスキルを学ぶとは、こういうことです。
将来どんなスキルの価値が高くなるか?を考える
何が大事かと言うと
「将来どんなスキルの価値が高くなるか?」
これについて考え、行動することです。
「戦略」という言葉の意味を思い出してください。
長期的・全体的展望に立った闘争の準備・計画・運用の方法。
このような意味でしたよね。
つまり「戦略的学習力」には
- 長期的な将来をみすえて
- 計画的に学ぶ
という意味もあるのです。
これからの未来、何が起こるかは誰にもわかりません。
けれど「未来の社会で必要とされるスキル」というのは必ずあります。
これからの社会でどんなスキルに高い価値つくのか?
言い換えれば「これから高い値段がつくスキル」ですね。
これが何かを、自分の嗅覚をつかいながら考えることが大事です。
そして、これから高い値段がつくスキルを「戦略的学習力」をつかって学ぶ。
マイケル・A・オズボーン准教授は、これが大事だと言いたいのだと思います。
戦略的学習力を鍛えるのにおすすめの本の紹介
ここまでで「戦略的学習力」について説明は終わりです。
最後に、戦略的学習力というスキルを身につけ、鍛えるためにおすめの本を紹介します。
おそらく、もっともわかりやすく、初心者向きの本はメンタリストのDaiGoさんの本です。
この本では実験・論文の結果にもとづいた、科学的に正しいと考えられている学習方法が紹介されています。
紹介されいる学習法の中には、DaiGoさんが実際に実践している方法なども紹介されていたりもします。
もしDaiGoさんの本を読んで、より深い関心・興味を持ったなら
などの書籍で学びを深めてください。
これらの書籍をすべて読めば、戦略的学習力についてひと通りの知識を得る事ができます。
そして、戦略的学習力についての知識はきっとあなたの仕事で役立つはずです。
引用・脚注
↑1 | Science:Retrieval practice protects memory against acute stress |
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↑2 | 朝日新聞デジタル:勉強時間は短い方が好成績? |
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