「アフィリエイトはオワコン」
という話をよく聞きます。
本当にアフィリエイトはオワコンなのでしょうか?
この問題について様々なデータを使い、アフィリエイトが本当にオワコンかどうかを考えます。
「オワコン」の意味
アフィリエイトがオワコンなのかを調べる前に、「オワコン」の意味を調べましょう。
これがわからないとオワコンかどうか決められません。
IT系のニュースサイトITmediaの記事で、オワコンという言葉について詳しく説明されています。
記事ではオワコンを次のように説明しています。
オワコンとは、終わったコンテンツの略。つまり、「もうブームが過ぎて旬ではなくなってしまった」という意味です。発祥は2ちゃんねると言われていますが、最近ではテレビでもその言葉を聞くようになりました。
つまり、右肩下がりのいわゆる「斜陽産業」がオワコンと言えそうですね。
さいきん電車内で読んでいる人が劇的に減った新聞は斜陽産業でしょうか?
新聞の発行部数をデータでチェックしましょう[1]日本新聞協会:新聞の発行部数と世帯数の推移。
明らかに発行部数が減っていることがわかります。
このように、明らかに下り坂の業界にいまから参入しても儲かりそうにありません。
アフィリエイトは新聞と同じで、これから右肩下がりの業界なのでしょうか。
アフィリエイトの市場規模が下がっているのかをまず調べます。
アフィリエイト広告の市場規模は下がっているのか?
アフィリエイトの市場規模を調べるために、調査会社が発表しているデータを見てみましょう[2]株式会社矢野経済研究所:アフィリエイト市場に関する調査を実施(2019年)。
データを見ると、2016年の段階で約2,316億円の市場規模があることがわかります。
そして、2016年から2023年にかけて約2倍の4,654億円まで伸びると予測されています。
アフィリエイトはテレビと比べると9分の1くらいの市場規模ということですね。
8年間で規模が2倍になる市場を斜陽産業と呼ぶ人はいないでしょう。
アフィリエイト広告の大手代理店と呼ばれる
などの会社は株式を上場しており、業績を発表しています。
各社が発表しているアフィリエイト広告の売り上はそれぞれの会社で年間100億円以上あります。
株価を見てもバリューコマースなんかは非常に伸びています。
これらの情報から客観的に判断すると、終わっているように見えません。
数字だけを見るとイメージとちがい、アフィリエイトはまさに成長産業そのものです。
Googleの検索エンジンを使う人が減っているのか?
ここまでのデータでアフィリエイトは市場全体としてはかなり伸びていることがわかりました。
ではなぜアフィリエイトはオワコンと言われるのでしょうか?
仮説として考えられるのは、検索する人の減少です。
検索エンジンを使ってWEBサイトを検索する人が減った、ということですね。
確かに、検索エンジンはアフィリエイト広告を掲載しているWEBサイトに人を呼ぶための優れた方法です。
もし検索する人が減ったらアフィリエイトサイトの売り上げは確実に落ちるでしょう。
日本では、検索する人のほとんどがGoogleを使っています[3]Web担当者フォーラム:検索エンジンのPCシェア、日本ではGoogleが減少しBingが増加【2020年2月・アウンコンサルティング調べ】。
検索回数がわかればいいのですが、残念ながらGoogleは国別の検索回数を発表していません。
なので、検索連動型広告のデータをチェックします。
GoogleやYahooで検索すると検索結果に広告が表示されたりしますよね。
検索エンジンの検索結果に表示される広告は
「検索連動型広告(リスティング広告)」
と呼ばれています。
もし検索する人が減っていたら、検索連動型広告の売り上げは確実に落ちます。
検索連動型広告の市場規模を見てみましょう。
検索連動型広告については大手広告代理店の電通が発表しています。
こちらもアフィリエイト広告のときと同じで、右肩上がりです。
しかも微増ではなく毎年数百億円以上伸びています。
これだけ伸びていると、検索連動型広告をクリックする人は増えていると考えるのが普通ですよね。
ということは、検索する人はおそらく増えているのではないでしょうか。
若者は検索しなくなったかもしれませんが、検索する人が減っている可能性は低そうです。
どうやら、アフィリエイトがオワコンと言われるのは
「検索する人が減ったから」
ではなさそうです。
なので、この仮説は間違いでした。
ではありませんので注意してください。
広告を出すクライアントが増えているだけ、という捉え方もできます。
アフィリエイトをやり始める人は減っているのか?
最初の仮説は間違っていました。
なので次の仮説に移ります。
2番目の仮説として取り上げるのは
「アフィリエイトをやり始める人が減っているのでは?」
です。
もしアフィリエイトが斜陽産業なら、アフィリエイトをやり始める人は減るはずです。
右肩下がりの商売をしても儲かりにくいからです。
新しくアフィリエイトをやる人は減っているのでしょうか?
アフィリエイトの広告代理店大手のファンコミュニケーションズは決算資料で
「登録パートナーサイト数の推移」
を公開しています。
これを見れば、新しいサイトがどれくらい新規登録されているかがわかります。
アフィリエイトをはじめた人は自分でサイトを新しく作り、A8のようなアフィリエイトサービスに登録します。
なので新規で登録されるサイトを見れば、アフィリエイトをやり始める人の増減イメージくらいはわかりそうです。
数字を見てみましょう。
下のグラフは、2017年から2020年にかけてA8に登録しているサイトの前年比の増加数を表したものです。
2018年から2019年にかけてやや下がったものの、そこまで大きな変化はありませんね。
毎年きちっと増えているものの、増加率はやや弱っているような印象を受けます。
しかし、このデータを見ても毎年10数万〜20万の新しいサイトがA8に新規登録していることがわかります。
このデータもアフィリエイトがオワコンであることを裏付ける証拠にはなりません。
なんで「アフィリエイトはオワコン」と言われるのか?
どうやら二つ目の仮説も正しくなさそうです。
業界全体を眺めてみると、アフィリエイトには
- アフィリエイト市場は順調に伸びている
- アフィリエイトに参入する人も毎年たくさんいる
このような、成長産業と呼べそうな条件がそろっています。
それなのに、なぜアフィリエイトはオワコンと言われるのでしょうか?
ここまでは業界全体の様子をデータを使って紹介しました。
ここからは業界を外側から見るのではなく、内側を見たり他の業種と比較してみます。
そして、なぜ良い条件がそろっているアフィリエイトがオワコンと言われるかを考えましょう。
はじめても稼げないから?
SNS・副業系のサイトや雑誌を見ると
「俺はアフィリエイトで〇〇万円稼いだ!」
というような景気の良い記事がたくさんあります。
こういった記事を読んでアフィリエイトをはじめる人も多いでしょう。
実際のところ、アフィリエイトは稼げるものなのでしょうか。
特定非営利活動法人アフィリエイトマーケティング協会が
「アフィリエイト・プログラムに関する意識調査 2020」
というアンケートをとっています。
これは先ほども紹介したA8などのアフィリエイト広告の代理店を通してアフィリエイトに取り組む「アフィリエイター」に行ったアンケートです。
このアンケートのなかに
「アフィリエイトでの1ヶ月の収入」
という、アフィリエイトに興味がある人にとってかなり気になる項目があります。
ここで質問です。
「このアンケートで毎月の収入が1万円以下と答えたアフィリエイターは全体の何パーセントになりますか?」
ちなみに、アンケートに回答してくれたアフィリエイターの数は2,846人です。
アンケートに回答するくらいなので、おそらく現役のアフィリエイターなのでしょう。
答えは66パーセントです。
つまりアフィリエイターの3人に1人はアフィリエイトでの月収が1万円以下なのです。
おそらくですが、このアンケートに回答してくれたのは割とちゃんと活動しているアフィリエイターの方達です。
なので、じっさいはもっと稼げない人が多いのではないか・・・と思います。
「アフィリエイトはもうオワコン」
と言いたい気持ちはみなさんもわかりますよね。
やりはじめても続かないから?
「アフィリエイトはオワコン」
と言われるのは、稼いでいる人が少ないからかもしれない。
これがなんとなくわかりましたね。
さきほど紹介した
「アフィリエイト・プログラムに関する意識調査 2020」
この調査には、他にも興味深いアンケートがあります。
それは
「アフィリエイトを始めてからの経過年数」
です。
アフィリエイトをはじめてどれ位ですか?という質問ですね。
この質問で38.2%のアフィリエイターが
「1年未満」
と答えています[4]2020年のアンケート結果。2019年に行われた同じアンケートでは38.6%。
つまり、現役アフィリエイターを10人集めたらそのうち4人近くはやり始めてから1年未満ということです。
アフィリエイトをやり始める人は多いのに、アフィリエイトの多くはアフィリエイト歴が1年未満・・・。
これはどういうことなのでしょうか。
これは推測ですが、みんなアフィリエイトを始めても続かなようです。
アフィリエイトは参入障壁が低く、誰でもはじめることはできます。
けれど、アンケートで紹介したように月1万円以上稼げる人は少数派という世界です。
だからみんな気軽にはじめ、稼げないからあっさり辞めているのではないでしょうか。
たしかに、雑誌やニュースなので
「アフィリエイトは稼げる」
と聞いていたのに全く稼げなかった
「アフィリエイトはオコワン」
と言いたくなりますよね。
データを見ると、誰でも参入できるけど
- (ほとんどの人が)稼げない
- (ほとんどの人が)続かない
というのがアフィリエイトです。
オワコンだオワコンだと言う人はもしかしたらアフィリエイトをやり始めたけど、思ったより稼げなくてすぐ辞めた人達かもしれません。
アフィリエイトに関するデータを整理
ここまでの内容を整理しましょう。
まず、アフィリエイトがオワコンではないことを証明するデータです。
データで見るとアフィリエイトは
などの理由により「成長産業」と言えそうです。
しかし、データで見ると
- 稼げる人が少ない
- 続かない人が多い
というのも事実です。
これらの事実から、アフィリエイトについてどう判断したら良いでしょうか?
結論としては
「アフィリエイトは成長産業であり成熟産業でもある」
が正解ではないかと私は考えます。
アフィリエイトは伸びているからこそ競争が激しくなっている
ある市場が成熟してくると、淘汰がはじまります。
これが当てはまるのはビジネスの世界だけではありません。
スポーツなどでも同じです。
産業が成熟すればするほど競合との競争が激しくなり、その中で上位に入るのが難しくなります。
ある産業が急成長するとき、脚光を浴びる存在が出てきます。
2000年代から2010年代にかけて
などが注目されました。
おそらく、これらの産業にいちはやく参入した人たちはそれほど苦労することなくお金を稼げたはずです。
しかしみんなに注目されるようになると、誰でも簡単に稼げる場所でなくなります。
伸びている産業だからといって、誰でも稼げるわけではありません。
毎年2倍で伸びている産業でも、その場所に人が殺到したら一部の人しか稼げなくなります。
いわゆる「淘汰」がおき、稼げる人と稼げない人の差が開くのです。
アフィリエイトの場合も、おそらく市場の伸びよりも参入する人の数の方が多いのだと思います。
それに、さいきんは大企業がどんどんアフィリエイトに参入して市場シェアを奪ったりもしています。
すると、限られたお金をみんなで奪い合うことになり、稼げない人が増え続けます。
そして、稼げなかった人がSNSやブログで
「アフィリエイトはオワコンだ」
と語っているのが現状なのではないかと思います。
成熟した産業で稼ぐのは大変です。
いまから自動車を作ってもトヨタを抜くのは難しいですよね。
ましてやお金もコネもない個人が売れる車を作るのは不可能に近いです。
大袈裟ですが、アフィリエイト産業はこれに近いような状況なのではないかと思います。
引用・脚注
↑1 | 日本新聞協会:新聞の発行部数と世帯数の推移 |
---|---|
↑2 | 株式会社矢野経済研究所:アフィリエイト市場に関する調査を実施(2019年) |
↑3 | Web担当者フォーラム:検索エンジンのPCシェア、日本ではGoogleが減少しBingが増加【2020年2月・アウンコンサルティング調べ】 |
↑4 | 2020年のアンケート結果。2019年に行われた同じアンケートでは38.6% |
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