「エンジェル投資家」
は最近生まれた職業だと思っていませんか?
じつは、エンジェル投資家は会社員よりも歴史がある職業だという説があります。
「エンジェルだなんて怪しい・・・」
「うさん臭い投資家に違いない・・・」
と感じている方はぜひエンジェル投資家の歴史を知り、ちゃんとした職業であることをチェックしてください。
この記事では、過去から未来にさかのぼりながらエンジェル投資家の歴史を説明していきます。
【1900年以前】エンジェル投資家の起源は劇場のパトロン?
エンジェル投資家の起源はイギリスにある、と言われています。
イギリスの国民的な作家といえばあのシェイクスピアです。
シェイクスピアが創作した劇は劇場などで披露されていました。
しかし、劇場の運営にはたくさんのお金がかかります。
劇場のオーナーはお金のやりくりでかなり苦労したことでしょう。
そんなお金がかかる劇場の運営を支援した富裕層たちがいます。
超がつく大金持ちで、劇場や役者たちを気前よく支援する彼ら・彼女たちは
「パトロン」
と呼ばれていました。
このパトロンを別の呼び方で表現する人たちがいました。
別の呼び方とは
「エンジェル」
です。
このように、パトロンをエンジェルと呼ぶようになったのが
「エンジェル投資家」
の起源だと考えられているのです。
ただ、いつくらいからパトロンをエンジェルと呼ぶようになったのかは不明です。
なのでざっくりと、エンジェル投資家の起源は1900年よりも前、くらいにしておきましょう。
あの歴史上の人物が「世界初のエンジェル投資家」という説も?
エンジェル投資家の歴史については、イギリス起源説以外にもさまざまな説があります。
なかには
「コロンブスの新大陸発見を支援したイザベル女王が世界初のエンジェル投資家だ」
という主張をする人もいます。
言ったもん勝ちの感はありますが、これが事実ならスケールの大きい話ですね。
ちなみに、イザベル女王がコロンブスの冒険を支援したのは1492年[1]世界史の窓:コロンブス。
このとき日本は明応(めいおう)元年、織田信長が生まれる42年も前です。
もしイザベル女王が世界初のエンジェル投資家なら、この仕事は会社員よりも古く、伝統のある職業ということになります。
だから会社員という職業が生まれたのは1600年以降です。
【1920年代】アメリカでも「エンジェル」という言葉が使われる
話を近代に戻しましょう。
1920年代になると、アメリカのニューヨークにあるブロードウェイ劇場でも「エンジェル」という言葉が使われるようになります[2]Sheltowee Angel Network:A BRIEF HISTORY OF ANGEL INVESTING。
ただ、ブロードウェイ劇場の場合は大金持ちのパトロンに対してだけでなく
「常連のお客さん」
もエンジェルと呼んでいたようです。
【1978年】現在の「エンジェル投資家」が誕生
1920年代までに、イギリスやアメリカで
「エンジェル」
という言葉が使われるようになりました。
けれど
「未上場の株式会社に投資する個人投資家」
という意味で使われる、現在のエンジェル投資家とは意味が少し違いますよね。
これが変わったのは1978年のことです。
きっかけを作ったのはアメリカにあるニューハンプシャー大学のウィリアム・ウェッテル教授です。
ウィリアム・ウェッテル教授が創業まもない企業に投資する個人投資家たちを
「エンジェル」
と呼びはじめたのです[4]CFI Education Inc.:What is an Angel Investor?
。
これにより
「未上場企業に投資する個人投資家」
が
「エンジェル投資家」
と呼ばれるようになったのです。
「エンジェル投資家」という言葉に関しては、1978年が起源ということですね。
歴史上有名なエンジェル投資の事例を紹介
ここで、過去に行われたエンジェル投資を振り返ってみましょう。
紹介するのは、エンジェル投資の歴史のなかでもとびきり有名なものばかりです。
発明王エジソンを支援したスペンサー・トラスク
「天才とは、1%のひらめきと99%の努力である」
という名言で有名なトーマス・エジソンは会社の経営者でもあります。
エジソンの会社は1881年、企業経営者であり投資家でもあったスペンサー・トラスクのエンジェル投資を受けています。
その後エジソンの会社は大成功し、さまざまな発明品で世界を豊かにしました。
もしスペンサー・トラスクによるエンジェル投資がなかったら、この世界に
などの製品が登場するのが少し遅れていたかもしれません。
あのAmazonもエンジェル投資家から支援してもらった
次に紹介するのはAmazonです。
あのAmazonも創業して間もないころにエンジェル投資家たちから資金を集めています。
1994年、Amazon創業者のジェフ・ベゾスに説得され、20人ほどのエンジェル投資家がAmazonに約1億円の投資をしました。
この金額は当時のAmazonの株式の20%ほどだったそうです。
その後、Amazonは急成長します。
2021年4月現在、Amazonの時価総額は1.75兆ドル(日本円で約191兆円)です。
もし20人のエンジェル投資家たちが今も株を保有していたらどれくらいの金額になったのでしょうか?
創業まもないGoogleにエンジェル投資したジェフ・ベゾス
Googleもエンジェル投資家からの援助を受けています。
1998年、Googleはエンジェル投資家のアンディ・ベクトルシャイムから10万ドルを調達しています。
そして、そのすぐ後にAmazon創業者のジェフ・ベゾスなど4人からも合計100万ドルの資金を調達しています。
その後のGoogleの大成功は説明するまでもありませんね。
ここでは紹介しませんが、facebookも初期にエンジェル投資家から資金を調達しています。
つまり、アメリカでは有望企業がエンジェル投資家から資金を集めるのは普通のことなのです。
【2015年以前】日本のエンジェル投資家事情
ここまで海外の話ばかりでしたので、ここからは日本のエンジェル投資の状況について説明します。
2000年前後、日本でもたくさんのベンチャー企業が誕生しました。
この頃から
「これからはインターネットの時代だ」
ということで、起業家などによるエンジェル投資が行われています。
ただ当時は
- インターネット業界の起業家・元起業家
- VC(ベンチャーキャピタル)・元VC
などのような金融・インターネット業界の人によるエンジェル投資が目立ちました。
インターネット業界と何のつながりもない個人の会社員投資家の出番はほぼゼロだったのです。
2015年になると、この状況が変わります。
【2017年】日本初の株式投資型クラウドファンディングの登場
2015年5月、金融商品取引法という法律が改正されました[5]金融庁:金融商品取引法等の一部を改正する
法律(平成26年法律第44号)に係る説明資料。
これにより、普通の会社員でもエンジェル投資ができる土台が整いました。
より具体的に言うと
「株式投資型クラウドファンディング」
というサービスを利用すれば、誰でもエンジェル投資ができるようになったのです。
日本初の株式投資型クラウドファンディングは、日本クラウドキャピタルによって運営されている
「FUNDINNO(ファンディーノ)」
です。
2017年にファンディーノが始まると、エンジェル投資に興味がある個人投資家たちがどんどん口座開設を申し込みました。
その当時、SNSでは
「ファンディーノの口座開設の審査に落ちた・・・」
「ファンディーノで口座作れた!」
などの投稿であふれていたものです。
誰でもエンジェル投資家になれる株式投資型クラウドファンディングは、それくらい注目されていたのです。
いまではファンディーノ以外にも
などのサービスがあり、エンジェル投資家になれるサービスは増えています。
今は誰でもエンジェル投資家になれる時代
ここまで、エンジェル投資家の起源や歴史を説明してきました。
歴史をみてもわかるように、エンジェル投資や株式型クラウドファンディングは怪しいものではありません。
将来有望な会社を支援するだけでなく、社会的な貢献もできる投資活動です。
政府(金融庁)も規制緩和を検討するなど、株式投資型クラウドファンディングについては積極的な姿勢です[6]日本経済新聞:投資型クラウドファンディング、発行額の規制緩和案。
今はだれでもエンジェル投資家になれる時代です。
企業を支援し、その結果として社会の発展に貢献したい。
こんな風に思っている、意義のある投資をしたい人はぜひエンジェル投資家になり、たくさんの企業をサポートしてください。
引用・脚注
↑1 | 世界史の窓:コロンブス |
---|---|
↑2 | Sheltowee Angel Network:A BRIEF HISTORY OF ANGEL INVESTING |
↑3 | 現代マネー:ソフトバンク、トヨタ、武田…高まる企業の「ベンチャー投資」リスク |
↑4 | CFI Education Inc.:What is an Angel Investor? |
↑5 | 金融庁:金融商品取引法等の一部を改正する 法律(平成26年法律第44号)に係る説明資料 |
↑6 | 日本経済新聞:投資型クラウドファンディング、発行額の規制緩和案 |
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