アメリカに「Degree Insurance Co.」という、2017年に創業された保険会社があります[1]会社の公式サイトはhttps://www.degreeinsurance.co/。
この会社が
「学位保険(がくいほけん)」
という、大学生向けの新しい保険商品を開発しました。
この保険は大学生にとって、大きなメリットがある保険です。
というのも、もし学位保険が日本で普及したら奨学金の返済で苦しむ学生が減るかもしれないからです。
この記事では、Degree Insurance Co.が開発した
「American Dream Insurance(アメリカンドリーム保険)」
という学位保険を例にして、学位保険の仕組みを解説します。
学位保険の保険料を支払うのは大学側
大前提なので先に説明しますが、学位保険の場合、保険会社に保険料を支払うのは学生ではありません。
大学側が保険料を支払うことになります[2]Degree Insurance:Students Degree Insurance<。
なので、学生が負担する金額はゼロ円です。

けっこう大きな金額なので、この金額を負担しなくて済むのは学生にとってありがたいことです。
学位保険が保証するのは大学卒業後から5年間の収入
学位保険が保証してくれるのは「大学卒業してから5年間の収入」です。
つまり、大学をきちんと卒業すれば保険加入者はその後5年間の収入が保証されるのです。
仮にあなたが大学に入学し、その大学が加入している学位保険に入ったとします。
そして、学位保険はあなたが卒業してから5年間にわたり、毎年500万円の収入を保証したとしましょう。
もしあなたが就職先から受け取れる給料が年収400万円だった場合、あなたは
500万円(保証金額)-400万円(あなたの年収)=100万円
このような差額を保険会社から受け取ることができます。
もしあなたの年収が5年間ずっと400万円だった場合は、合計で
100万円×5年間=合計500万円
という、かなり大きな金額を受け取れる計算にあります。
ただし、差額である100万円は毎年受け取れるわけではありません。
保険会社が保証した金額は、大学を卒業してから5年後に一括でまとめて受け取ることになります。

なので奨学金の返済や結婚・住宅購入などの計画を立てやすくなるなどのメリットがあります。
学位保険によって保証される金額は大学・専攻によって違う
ここまでで、学位保険に入っていれば大学卒業後の5年間の収入が保証されることがわかったと思います。
では、学生がじっさいに卒業後に保証される金額はどれくらいなのでしょうか?
学位保険では、普通の保険商品と同じで保険会社のアクチュアリー(保険数理士)が保証する金額を計算します。
アクチュアリーは、その大学生の
- 通っている大学
- 専攻している学部
などによって、適切な保証金額を算出してくれます。
簡単にいえば、将来有望なスキルや知識を学べる確率が高い学校・学部に入っていれば保証される金額も高くなる仕組みですね。

アメリカで学位保険を提供している「Degree Insurance Co.」は、事例として以下のような学部・専攻ごとの保証金額を紹介しています[4]Degree Insurance:Students Degree Insurance。
- ヘルスケア→6万ドル(日本円で約660万円)
- エンジニアリング→5万1000ドル日本円で約561万円)
- ビジネス→4万8000ドル日本円で約528万円)
ヘルスケアつまり医療系の学部に入った方がエンジニア系の学部に入るよりも稼ぎやすい、ということですね。

このあたりは実際の収入データに基づいて数値を出しています。
なので、いま現在だと
などはかなり高い金額を保証してもらえそうですね。
保証されている金額を受け取るための条件
基本的には、学位保険は大学を卒業すれば保証する金額の受け取り対象になれます。
けれど、以下に該当する人は保証対象になれません[5]Degree Insurance:Students Degree Insurance<。
「勤務先の会社の株式を1%以上取得している人」というのはユニークな条件です。
しかし、勤務先の大株主になると社員の給料などに口を出すことができるので、保険会社にとってこの条件はとても大事です。

なので、Degree Insurance以外の会社が開発した学位保険では条件が異なる可能性があります。
保証されている金額を受け取れるタイミング
すでに少し触れましたが、保証されている金額を受け取れるタイミングについて説明します。
結論から言うと、保証された金額と実際に得た収入との差額は卒業から5年後、一括でしか受け取れません。
差額分を毎月・毎年受け取ることはできないのです。
これは、大学卒業後に就職しなくなる若者などが増えないようにする仕組みかもしれません。
保証されている金額を請求する方法
最後に、保険会社に保証されている金額を請求する方法についてです。
といっても、説明するようなことは特にありません。
日本における源泉徴収票のような書類を保険会社に提出し、じっさいに受け取った収入を証明します。
そして、保険会社が保証した収入と照らし合わせ、差額分を受け取るだけです。
学位保険は大学生にとってメリットが多い
ここまで、学位保険の仕組みについて説明しました。
説明したように、学位保険は学生側に負担が無い仕組みです。
それなのに、学生にとってたくさんのメリットがあります。
もし日本で学位保険がはじまったら是非利用可能な大学等を探してください。
デメリットがゼロなわけではありませんが、基本的には学生にとって良いことの方が多いサービスだと思います。
引用・脚注
↑1 | 会社の公式サイトはhttps://www.degreeinsurance.co/ |
---|---|
↑2, ↑5 | Degree Insurance:Students Degree Insurance< |
↑3 | American Enterprise Institute:There’s insurance for homes or cars—why not college degrees? |
↑4 | Degree Insurance:Students Degree Insurance |
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