自動運転の車を遠隔操作するドライバーとはどんな仕事なのか?

明治32年、西暦でいうと1900年、人が高速で移動する手段は馬車でした。
それから数年後、ガソリン自動車が普及し馬車は急速に減りました。
そして、馬車のエンジンである馬を操作する「御者」の仕事はほぼ無くなりました。

このように、テクノロジーの進化により人の仕事がなくなることがあります。
自動車についてはどうでしょう。
テクノロジーにより、「人が運転する自動車」から「AIが操作する自動運転車」に進化しつつありますよね。
この進化によって、ドライバーの仕事は無くなるのでしょうか。

おそらく、この進化によって一部のドライバーの仕事はなくなるでしょう。
けれど、代わりに新しい仕事が生まれます。
それは
「自動運転の車を遠隔操作するドライバー」
です。

ここで疑問が生まれます。
自動運転で動く車には、車を操作するドライバーはいません。
それなのに、なぜドライバーが必要なのでしょうか?

なぜ自動運転でも「人のドライバー」が必要なのか?

「自動運転」と「ドライバー」という言葉は矛盾しています。
ほんとうに「自動」で車が動くなら人のドライバーはいらないはずです。
まず、なぜ自動運転でも「人のドライバー」が必要なのかを説明します。

自動運転には「レベル」がある

自動運転には、自動化のすすみ具合によって「レベル」が設定されています。
レベルは0〜5の間で変化し、「レベル0」が2021年のいまの自動車の状況です。
つまり道路を走るすべての車にドライバーが乗っている状態です。
そして「レベル5」が、車の自動化に完全に成功し、ドライバーがいなくなった状態のことです。
レベル5になると、ドライバーがいない車に人が乗り、移動中もテレビを見たり仕事をすることができます。

レベルで見ると、0と5にはとてつもない開きがありますよね。
0はいまの社会ですが、5になるとSF小説やアニメのような世界です。

「レベル5」は不可能という説も

自動運転のレベルが5になると、まるでフィクションのような世界が到来します。
しかし、レベル5については

  • 実現は不可能
  • 実現するのは極めて難しい

という説があるのも事実です。

自動運転のリーディングカンパニーである「テスラ社」のイーロン・マスクは2020年7月に

近くレベル5(すべての運転を自動化)を実現するだろう

引用元:マスク氏「レベル5は近い」 上海で世界AI大会

と語っていますが、実現までのハードルはとても高いのは誰もが認めるところです。

「法律」の問題がある

自動運転にはさまざまなハードルがあります。
各国がさだめる
「法律」
もそのひとつです。

  • Apple
  • Google
  • Facebook
  • Twitter

などの超有名IT企業がある、アメリカのカリフォルニア州では

カリフォルニア州では、車内に運転者がいない車両は遠隔操作されなければならないと法律で定められている。フロリダ、アリゾナ、オレゴン、ワシントンの各州も、同様の規則を検討中だ。

引用元:自律走行車を「遠隔操作」する技術、開発競争が静かに進行中

となっています。

つまり、もし自動運転ができても、車の外にいる誰かによって遠隔操作ができなくてはならないのです。
たとえレベル5の技術があっても、もしものときに備え
「車を遠隔操作(遠隔運転)するドライバー」
が必要なのです。

もしカリフォルニアの法律が実質的な世界基準になれば、全世界の自動運転車において
「遠隔操作するドライバー」
が必要になります。

ドライバーはどうやって車を遠隔操作するの?

ふつう、車の運転は車内にある

  • ハンドル
  • ブレーキ

などの操作によっておこなわれます。
遠隔操作の場合、どうやって車を操作するのでしょうか。

アメリカにはDESIGNATED DRIVER(デザイネーテッド・ドライバー)という会社があります。
この会社は自動運転に取り組んでおり
「テレオペレーション(英語で「遠隔操作」という意味)」
という名称を遠隔操作するドライバーにつけています。

サイト管理人 南研吾
サイト管理人 南研吾
日本でも遠隔操作するドライバーは「テレオペレーション」や「テレオペレーター」と呼ばれるようになるかもしれません。

テレオペレーション担当の人が車を操作している様子を写真で見てみましょう。

車を遠隔操作している人

DESIGNATED DRIVERのテレオペレーションの様子。DESIGNATED DRIVER公式サイトより引用

まるでゲームセンターでゲームをしているようですね。
6つのディスプレイをつかい

  • 左上:車の運転席にのっている人の様子
  • 真ん中上:車の前方の様子
  • 右上:ナビの地図での車の位置
  • 左右下:車の横の様子
  • 真ん中下:車の後方の様子

などの情報を得て運転していることがわかります。
おそらく、写真にはおさめられていませんがアクセルのような器具も足元にあるはずです。
大きなスピーカーから車の周辺の音声を聞くこともできそうです。

念のため伝えておくと、このような遠隔操作が実現するのはまだまだ先のことです。
それでも、このようなイメージで進行していることを覚えておいてください。

自動運転車を遠隔操作するドライバーになるには?

最後は、自動運転車を遠隔操作するドライバーになる方法について説明します。
しかし、残念ながらいまのところ方法は全くわかりません。
そもそも

  • 日本でも自動運転の車に遠隔操作のドライバーが必要になるか
  • ドライバーが遠隔操作して事故を起こしたら誰の責任になるか
  • 車に乗っている人は遠隔操作するドライバーに命を任せることができるのか

などの障害もあり、自動運転自体が実現するかどうかもわからないのです。

それでも、どうなるかを予想することはできます。
遠隔操作のドライバーになるには3つの方法が考えられます。

  • ウーバーイーツのようにシェアリングエコノミー的に働く
  • 自動運転車を販売した会社で遠隔操作ドライバーとして働く
  • 自動運転のシステムを開発した会社に所属して遠隔操作ドライバーとして働く

このなかで、もっとも不安的な働き方は
「ウーバーイーツのようにシェアリングエコノミー的に働く」
です。
この場合、ウーバーイーツのドライバーのように業務委託で働くことになります。
つまり、独立したドライバーとして働くのです。
この場合は事故などがおきたらすべて遠隔操作する人の責任になってしまいそうです。

他の方法である

  • 自動運転車を販売した会社
  • 自動運転のシステムを開発した会社

で働くというのは魅力的です。
というのも、これらの事業をおこなう会社は規模的に世界トップクラスの会社だからです。
現在でいう、トヨタやグーグルで働くようなものですね。

じっさいどのようになるかはわかりませんが、このような展開になるのではないか、予想しています。

人にしかできない「車を遠隔操作するドライバー」の仕事

ここまで、自動運転の車を遠隔操作するドライバーについて説明しました。

この記事には、人にとって大きなヒントがあります。
それは「責任」の問題です。

公道にあるすべての車の自動運転が実現しても、交通事故はゼロにはなりません。
では、ドライバーがいない自動運転の車が事故を起こした場合、誰が責任をとるのでしょうか。
このようなケースでは

  • AI
  • ロボット

などでは責任を取ることは難しいです。

おそらく、責任をとるのは人や人が集まって出来上がる「会社」でしょう。
けっきょくのところ、どんなにテクノロジーが進んでも社会が人によって構成されているうちは
「人の仕事」
はなくなりません。

自動運転車を遠隔操作のドライバーも、人ならではの仕事です。
このような責任がともなう仕事は人に任される、これを知っていればAIなどが浸透した社会でも
「AIに奪われない仕事」
を選択できるはずです。

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